柏木 (源氏物語) (Kashiwagi (The Tale of Genji))

柏木(かしわぎ)は、『源氏物語』五十四帖の巻名のひとつ。
第36帖。
巻名は作中で柏木(下記)の未亡人落葉の宮が詠む和歌「柏木に葉守の神はまさずとも人ならすべき宿の梢か」に因む。

『源氏物語』の架空の登場人物の通称。
「柏木衛門督」とも呼ぶ。
頭中将(内大臣)の長男。

あらすじ

光源氏の48歳一月から四月までの話。

病床に伏した柏木はこれまでと覚悟し、女三宮に文を送る。
小侍従にせかされて女三宮もしかたなく返事を書き、柏木は涙にむせんだ。
その後女三宮は無事男子(薫)を出産したもののすっかり弱り切り、心配して密かに訪れた朱雀帝に出家を願った。
傍らで見守っていた源氏も今さらながら慌てて引き留めようとしたが、女三宮の決意は固く、その宵のうちに朱雀院の手で髪を下ろしてしまった。

女三宮の出家を知った柏木は絶望、両親や兄弟たちに後のことを託した。
離れ離れの妻落葉の宮も涙に暮れる。
夕霧が心配して見舞いにやってくると、柏木はそれとなく源氏の不興を買ったことを告げて、夕霧からとりなしてほしいと頼んだ。
兄弟たちも皆悲しむ中で柏木はとうとう死去。
とりわけ両親の嘆きは激しく、伝え聞いた女三宮も憐れに思って泣いた。

三月に薫の五十日の祝いが催された。
薫を抱き上げた源氏はその容姿の美しさに柏木の面影を見て、さすがに怒りも失せ涙した。
一方夕霧は事の真相を気にしながら、柏木の遺言を守って未亡人となった落葉宮の元へ訪問を重ね、そのゆかしい暮らしぶりに次第に心惹かれていった。

人物

頭中将の嫡男で、母は桐壺帝の右大臣の四の君。
同母兄弟に紅梅、弘徽殿女御がいる。
『源氏物語』第二部の重要人物。

才芸豊かな貴公子であり、和琴や蹴鞠、笛を得意とした。
従兄弟にあたる夕霧とは親友である。
玉鬘が現れた当初、異母姉妹と知らずに想いを寄せて文を贈ったこともあったが、妻に迎えるなら内親王をと強く望み、女三宮の降嫁を熱心に願った。
結局叶わず落葉の宮を正室としたが、ふとしたことから女三宮を垣間見て以来恋情やみがかった。
その飼い猫を得て自分を慰めたものの、源氏の留守に女三宮の乳母子の女房に迫り手引きさせて思いを遂げる。
この結果女三宮は薫を身ごもる。
事実を知った源氏に宴席で皮肉を言われた柏木は恐怖のあまり自失、死の床についた。

いまわの際に落葉の宮との対面を望むが、彼を偏愛する両親に妨げられてこれは果たされず、夕霧に後事を託した。
また死後に形見の笛が夕霧に贈られた際、夕霧の夢枕に立って我が子(薫)に伝えてほしいとほのめかした。

[English Translation]